米国のBtoBエージェンシー市場が6年連続で成長を続けている。経済的な不確実性が続く中でも、トップエージェンシーは大幅な収益増を実現した。この現実から、日本のBtoBマーケターが自社の戦略に落とし込めるヒントは多い。
米国BtoBエージェンシー市場で起きていること
B2B Marketing誌が発表した「2026 US Agencies Benchmarking Report」によると、今年の調査対象25社の平均グロスインカム(総粗利)は2,300万ドルに達した。注目すべきは絶対額の成長だけでなく、成長率の高さだ。
ライジングスター(Rising Star)部門のトップに輝いたEntourageは、前年比77.5%増という驚異的な伸びを記録。絶対額の成長では、Dentsu B2Bが前年比4,820万ドル増という数字を叩き出し、グロスインカムは1億2,800万ドルに達した。しかも同社は米国だけでなく、英国の調査でも首位を獲得している。
ここで正直に言うと、これらの数字を「海外の話」として読み流してしまうマーケターが少なくない。だが、急成長したエージェンシーに共通する戦略的な特徴は、日本のBtoB企業が抱える課題と驚くほど重なっている。
急成長の背景にある「専門特化」という選択
今回ランクインしたエージェンシーを見ると、BtoB領域に特化したポジショニングをとっているプレイヤーが目立つ。Dentsu B2Bはその名が示す通り、BtoBマーケティングに絞り込んだブランドとして展開している。Park & Batteryも「BtoBブランド戦略(B2B Brand Strategy)」に集中した専門性で成長を続けている。
これは日本市場でも同じ文脈で語れる話だ。「何でもできます」から脱却し、特定の業界や課題領域に絞り込んだ専門性を打ち出す企業が、顧客から選ばれやすくなっている。ここが落とし穴で、総合力を訴求したくなる気持ちはわかるが、BtoB購買において意思決定者が求めているのは「私の課題を分かっているか」という確信だ。
日本のBtoBマーケターであれば、自社サービスの打ち出し方を今一度問い直してほしい。「製造業のDX推進に特化した〇〇」という訴求と、「あらゆる業種のDXを支援します」という訴求では、受け取られ方が根本的に違う。
「パーセント成長」と「絶対額成長」、どちらを目標にするか
今回のレポートが面白いのは、成長指標を2軸で評価している点だ。成長率(パーセント)で見るライジングスターと、絶対額で見るファステストグロワー(Fastest Grower)を分けて評価している。
この視点は、日本の社内マーケティング部門がKPI(重要業績評価指標)を設定する際にそのまま使える。新規獲得リード数の成長率なのか、パイプライン(商談金額)の絶対額なのか、どちらを優先するかによって、打つべき施策が変わってくる。
たとえば、スタートアップや新規事業フェーズであれば成長率を追いかけることに意味がある。一方、ある程度の市場プレゼンスを持つ企業が同じ指標を追っていると、小さなパーセント増に一喜一憂するだけで、事業インパクトは出ない。自分たちが今どのフェーズにいるかを見極め、KPIを設計し直すことが先決だ。
市場が不確実でも成長できる組織の共通点
米国エージェンシー市場は「経済的な不確実性」が続く中でも、平均収益が増加した。これをどう解釈するか。
答えは単純で、不確実性の高い時期こそ、マーケティング投資の「選択と集中」が機能する。実は、景気が不透明な時期に予算を一律カットする企業と、ポートフォリオを整理して重点領域に集中投下する企業では、2〜3年後に大きな差が生まれる。これはデータが繰り返し示している事実だ。
日本のBtoB企業では、不景気局面でマーケティング予算が最初にカットされる傾向がある。しかし、競合が引いた局面でこそ、自社のブランド(Brand)と需要創出(Demand Generation)への投資が中長期的に効いてくる。今年成長したエージェンシーを抱えるクライアント企業は、おそらくその判断をしていた。
日本のBtoBマーケターが今すぐできる3つの実践
米国の事例を受けて、日本市場のコンテキストで即動けることをまとめる。
まず、自社のポジショニングを「誰のための何か」に絞り込む見直しを行うこと。次に、マーケティングのKPIを「成長率」と「絶対額」の2軸で設定し、事業フェーズと照合する。そして、経営層に対してマーケティング投資の「継続と集中」を提言するための社内コミュニケーションを準備する。
特に3つ目は、日本のマーケターが最も苦手としているところだ。数字と事例を使って経営判断に関与する姿勢を持てるかどうかが、マーケター自身のキャリアにも直結してくる。
まとめ
米国BtoBエージェンシーの急成長から見えてくるのは、専門特化・KPI設計の明確化・不確実性下でも投資を継続する判断力、この3点だ。日本のBtoBマーケターも、海外の動向を「参考情報」で終わらせず、自社の戦略に翻訳して実行に移す習慣をつけることが、中長期的な競争優位につながる。データは出そろっている。あとは動くかどうかだ。
参考:https://www.b2bmarketing.net/us-agencies-growth-2026-blog/
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